金魚の幽霊 [梅花氷裂]

金魚の幽霊
縄でしばられた「藻の花(ものはな)」という女性が、金魚鉢に頭を突っこまれて殺された。その恨みが金魚鉢の金魚に乗りうつって金魚の幽霊に化し、殺した蓑文太(みのもんた)という男とその女を襲うという話が江戸時代にある。
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図説日本妖怪大全 水木しげる 講談社+α文庫



というのがあるのですが、これは、山東京伝(さんとうきょうでん)作の「梅花氷裂(ばいかひょうれつ)」という作品をもとにしているのだと思うのですが・・・・

これが、ぜんぜん違うんですよね。(^^)

まず、金魚鉢に頭を突っこまれて殺されたと書かれているのですが・・・・
金魚鉢というと次のようなものが思い浮かぶと思います。

金魚鉢

でも実は、本文には金魚鉢という言葉は一度も出てきません。
本文では、金魚槽(きんぎょぶね) あるいは、水槽(みづぶね) と表現されています。

水槽
クリックすると大きな絵が出ます。

この絵からも分かる通り、金魚が飼われていたのは、鉢ではなくて水槽だったのです。(^^)

それから死因なのですが、この女性は水槽に頭を突っ込まれて殺されたのではありません。

この女性は、縛られているのをなんとか抜け出して、水を一口飲もうと、金魚の水槽から水を飲んでいるところを見つかって、男に腹を蹴られて殺されたのでした。

それと男の名前が、蓑文太(みのもんた) となっていますが、どこかで聞いたことのある名前ですね。(^^)

「みのもんた」では、苗字が「蓑(みの)」で、下の名前が「文太(もんた)」という感じですが、本文ではこの男の名前は、

舊鳥蓑文太(ふるとりさぶんだ)となっています。

つまり、苗字が「舊鳥(ふるとり)」で、下の名前が「蓑文太(さぶんだ)」ということです。

蓑文太

舊鳥蓑文太(ふるとりさぶんだ)
桟(かけはし)と姦通(かんつう)して
寝所(しんじょ)へしのび
藻(も)の花(はな)を
害(がい)す
もの花(はな)
の怨魂(ゑんこん)
金魚(きんぎょ)に
着(ぢゃく)す

窓のところにいる女性は、食事の用意などをする11才・12才の少女で、夜、厠に行った時に、たまたま事件を目撃してしまいます。

次に、凄惨な殺人の描写を見てみます。

足をあげて藻の花が横腹をしたたかに蹴たりければ、嗚呼(ああ)痛哉(いたわしきかな)、たちまち横腹破(よこはらやぶ)れて破目(やぶれめ)より血に染まりて、生れ出(いで)しは男子(なんし)とみえ、いまだ月はたらずといへども五輪尽(ごりんことごと)く具(そなわ)りて、唯目(ただめ)をあかざるのみ。

胞衣(えな)の緒を口にくわえてはらばい出(いで)、うぶ声を一声(ひとこゑ)あげつるが、桟(かけはし)はこれを見てますます妬(ねたみ)のおもい胸にあふれ、情けなくもそのみどり子をとらえ、咽(のんど)をしめてぞ殺(ころ)しける。誠是悪鬼(まことにこれあくき)にもまされる所行(ふるまい)なり。藻の花は呀(あ)と一声(ひとこゑ)さけび血を吐きてその侭(まま)息は絶果(たえはて)けり。



次に、藻の花の怨魂が、金魚に乗り移るところの描写を見てみます。

さて藻の花が吐きたる血、金魚槽(きんぎょぶね)のうちに流れ入(いり)て、水にまじわるとみえしが、たちまち一陣の冷風さっとおとし来て、庭木の梢(こすえ)を吹きならし、水槽(みづぶね)の水、ざはざはとなりうごき、怪直哉(あやしいかな)、藻の花が吐きたる血、あまたの金魚の身にしみこみ、斑(まだら)の紅魚(こうぎょ)すべて人血(じんけつ)の色に変じ一(ひと)しお濃紅(こきくれなゐ)の色となり、眼(まなこ)をいららげ、頬をふくらし、腹はたかくさし出(いで)て、妊婦(はらみをんな)の腹のごとくになり、尾さき乱れて、さかしまに打ちかふり、憤怒の勢いをなし、狂いめぐりて水を吐形成(はくありさま)おそろしなどもいうべからず。

正是(まさにこれ)、藻の花が怨魂(えんこん)金魚(きんぎょ)に還着(げんちゃく)したるに疑いなし。

これ後(のち)の世にその種(たね)をつたへて獅子(しし)と称じ或いは乱中(らんちゅう)と称じてもてあそぶ一種の金魚これより始りけるとかや・・・



最後の方に、ランチュウの由来について書かれていますが、金魚そのものも、中国から日本に持ち帰ったのは、作中人物の粟野十郎左衛門(あわのじゅうろうざえもん)ということになっています。

粟野十郎左衛門は、禅僧の絶海禅師(ぜっかいぜんじ)の供をして、明に渡った折に金魚の美しいのを見て、日本に持ち帰ろうとします。しかしこの時、絶海禅師は次のように戒めます。

この魚(うお)珍奇美麗といえども、薬品にあらず。食物にあらず。ただ見るのみの玩物なり。たずさえること無役なり。


しかし、粟野十郎左衛門は、これに従わず金魚を日本に持ち帰ります。このことにより、金魚にまつわる因縁話が繰り広げられることになるのです。

もう少し続く予定です。
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Author:服部
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